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あなたはこうやって結婚生活に失敗する(15)

11)(12)(13)(14)(15)(16)(17)(18)(あとがき) 女性編

結婚10年

あなたは結婚して以来幾度となく奥さんと喧嘩をしてきました。しかし、離婚には至っていません。その証拠に、こうして結婚10年目を迎えています。確かに、離婚を考えたこともあります。元々は赤の他人である二人が同じ屋根の下で暮らすのですから不平や不満がないはずがありません。それでも夫婦を止めないでいるのは一言では言えない理由があります。

例えば、世間体。離婚をしたなら隣近所の噂になるのは間違いありません。子供がいじめられる原因になるかもしれません。

また例えば、親類への配慮。良く言うと「配慮」ですが、正直に告白するなら「配慮」というよりは「見栄」のほうが正しいかもしれません。あなたは弟さんや妹さんから軽蔑されることを恐れています。それよりご両親の叱責を恐れているのかもしれません。ご両親はあなたの結婚式で親戚縁者に晴れやかにスピーチをしていました。その優越感に浸ったようなご両親の表情を思い出すたび、あなたは離婚を思いとどまっていました。

ご両親が親戚縁者に対して優越感を持つほど、あなたの結婚は世間的に羨ましがられるものでした。あなたの奥さんは当時一流企業と言われた会社の取締役のご令嬢だったからです。つき合い始めた当初、あなたは奥さんの家庭環境に気後れしたのも事実です。しかし、つき合い始めてみると気さくで話しやすく、明るい性格に惹かれたのでした。それに容貌も悪くはなかったからです。

そして10年後の今です。

今のあなたたちの生活環境は結婚当初と様変わりしていました。義父、つまり奥さんのお父さんの会社は業績悪化で昔の勢いは失せていました。義父もすでに退職し、その後は地元の小さな企業で週3日働くだけになっていました。それでも、現役時代の蓄えがありましたのでそれなりの暮らしはしていました。

様変わりしたのはあなたたちの暮らしぶりも同じです。あなたは転職をし今は中小企業で部長の肩書きを持っています。あなたは家族のために一生懸命働いていました。

それからもっと重要な変化があなたたち夫婦の間に起こっていました。それは家計管理が奥さんからあなたへと交代したことです。理由は簡単です。奥さんが家計管理ができないからでした。

このように言うと、奥さんが主婦として全く無能のように思われますが、決してそうではありません。家計管理は今ひとつですが、隣近所とのつき合いやPTA活動などにおいては才能を発揮していました。

また、主婦としての基本である掃除や洗濯は優秀とまではいえませんが合格点には到達していました。特に料理関係は、本人も「好き」と言うだけあってあなたが満足できるレベルに達していました。

やはり問題はお金の使い方。計画性のなさです。それを知ったあなたは危険を感じ家計管理を自分でやるようにしたのでした。

奥さんの家計管理の実態を知るまで、あなたは家計については全く無関心でした。お給料は銀行振込でしたが、その銀行のカードは奥さんに渡していました。あなたは1ヶ月に必要な小遣いだけを貰っていただけです。そのような状態でしたので、あなたは、家計にお金がいくらあるのか? 貯金がいくらあるのか? など知りませんでした。ただ、それなりのお給料の金額でしたので「そこそこは溜まっている」と想像していました。

ある日。あなたは会社で同僚たちの会話を耳にします。それは自宅購入の話でした。30代半ばを越えると、サラリーマンと言えども自分の資産として家の購入を考えるものです。同僚たちはそんな話をしていました。

その日、あなたは帰宅する電車の中で「同僚たちの会話」を思い出します。家、か…。同僚の話に触発されたのです。あなたはその夜、子供さんたちが寝静まったあと奥さんに尋ねます。

「なぁ、今、我が家って貯金いくらある?」

そのとき奥さんは通販カタログを見ていました。あなたの質問に奥さんは真剣に考えるでもなく他人事のように答えます。

「う~ん、よくわからない」

あなたは、奥さんのぞんざいな答え方に無責任さを感じます。会社で責任ある立場にいるあなたは会社の財務状況にはいつも注意を払っていました。売上げはいくらか。預貯金はいくらか。すぐに使える現金はいくらか。これらの数字は「重要」という言葉を越えて企業が成り立つ上で「生死を決める」数字です。あなたに言わせるなら、これらを把握していない幹部は幹部としての責任を放棄していることを意味します。

家庭も企業と同じです。収入があって支出があってそれらをやり繰りして家庭は成り立っていくものだからです。その重要な数字をあなたの奥さんは把握していないのでした。そのことはあなたにとって信じられないことでした。そんな無責任な幹部がどこにいるでしょう。しかし、奥さんはその無責任な幹部でした。

あなたは、心の中では奥さんの答えに憤怒していました。しかし、そこは結婚して10年を過ぎた経験があります。感情的になっては夫婦の会話がすぐに夫婦の喧嘩になることをあなたは学んでいました。

あなたは抑えた口調で奥さんに問い詰めます。もとい、「お願い」します。

「ちょっと調べてくれよ」

あなたの声に、奥さんはカタログのページをめくる手を一瞬止めましたが、それ以上は反応しませんでした。あなたは再度問い詰めます。もとい、「お願い」します。

奥さんは、あなたの再度の「お願い」に面倒くさそうに立ち上がりました。そしてタンスの引き出しを開けると布袋を取り出しました。そして布袋を手にしてあなたの前に座りました。あなたが近くで見ると、布袋は巾着の形をしていました。奥さんは紐をほどき中から通帳の束を取り出します。あなたはそれを見て驚きます。

「そんなに通帳があるのか?」

通帳は20冊以上あるように見えました。奥さんは驚くふうでもなく答えます。

「古いのもあるから全部が今使ってるものじゃないわ」

「えっ、どうして古いものを分けてないの?」

「面倒だから。ついつい…ね」

そう言いながら奥さんは今使っている通帳を探していました。あなたは奥さんの横顔を見つめます。奥さんはあなたが見つめているのを気がついていないようでした。

あなたは巾着の布袋を見てあることに気がつきました。

「なぁ、おまえ外出するときいつもその巾着を持ち歩いてないか?」

「そうよ。銀行とかに行くとき通帳って必要でしょ」

奥さんは「当然過ぎることを聞く」あなたにあきれたような表情で言いました。

「えっ? 全部の通帳を持って歩くのか?」

奥さんはまたあきれたような表情で答えます。

「だって、そのほうが簡単でしょ…」

奥さんの言葉を聞いて、あなたはさすがに声を荒げてしまいます。

「なに言ってんだ! 全部の通帳を持って歩くのが危険だとは思わないのか!」

あなたの剣幕に、奥さんは呆気にとられた表情をしました。奥さんは、あなたが怒っている理由がわからないのです。

結局、奥さんは今現在の家庭にあるお金についてなに一つ把握していませんでした。それどころか、毎月いくら使っているかもきちんと掴んでいませんでした。あなたは怒る気持ちにもなりません。あまりに情けなさすぎて…。

それ以来、家庭のお金の管理はあなたが行うようにしました。毎月、必要な金額だけを奥さんに渡し、そして使った金額をノートに記すようにさせました。つまり家計簿をつけるようにさせたのです。奥さんはしぶしぶ従いました。ですが、「しぶしぶ」ですから毎日ノートにつけていたわけではありません。奥さんに言わせると「ついつい」忘れてしまうことがあるのでした。

そのたびにあなたは奥さんに言ってきかせます。

「お金は天から降ってくるのではなく、稼いで得るんだから上限があるんだ。お給料の金額という上限があるんだからきちんと計画性を持って支出をしないと家庭が破産することもあるんだぞ」

あなたがそう訓示をするたびに奥さんは理解しているのかしていないのか、ただうつむいているだけでした。

あなたが家計をやり繰りをするようになって2ヶ月が過ぎた頃。

いつものようにあなたが奥さんに訓示をしていると、いつもはうつむいている奥さんがあなたの目を見ています。普段と違う雰囲気をあなたは感じます。

「わたし、なんか嫌になってきた…」

奥さんの言葉に、あなたは聞き返します。

「なにが?」

奥さんは今まで抑えていた感情が爆発したかのようにまくしたてます。

「あのね、こうやって毎日お金に汲汲として生活することが嫌になったの!」

あなたは唖然とします。

「わたし、我慢できない! スーパーでお買い物するのにも神経使うし、電気とかガスとかも料金を考えながら使うのが疲れるの」

今度は、あなたの感情が爆発する番です。

「おまえ、なに言ってんだ! お金をちゃんと使えない主婦がどこにいる!? もう少し大人になれー!」

あなたに怒鳴られて奥さんの感情はさらに爆発します。

「わたし、こんなふうに生活したことないから無理! 自分の好きなように好きなだけお金使いたいわ」

「おまえ、よくそんなことで今まで生きてきたな! おまえの親の顔が見たいよ」

「わたしの親を馬鹿にするの?! わたしを大切に育ててくれた親よ。少なくともお金に不自由させなかっただけあなたよりましよ!」

奥さんは、目に涙を一杯浮かべていました。そして決定的な言葉を口にします。

「あなたとなんか結婚するんじゃなかった」

あなたはこうやって結婚生活に失敗します。

お金に対する感覚は、育った環境に左右されます。「三つ子の魂」を変えるのは至難の技です。家庭において、家計管理ができるかできないかは「死活問題」です。奥さんを選ぶときは、お金に関して計画性があるかないか、充分調べてから決断しましょう。

第15回終了。

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